バイリンガル育成に成功する海外の教育方法
『子どもに残せる財産は「家」と「言語」だよ。』
ある日イギリス人の上司が言った言葉です。その言葉を聞いてハッとしました。英語を学んできた身なのに、子どもに受け継いであげないなんて、もったいない。
日本では大金を払って英語教育をする両親が多いけれど、バイリンガルになれる子はわずか。一方で、海外では、バイリンガルであることが当然である国もあります。
本記事では、海外でのバイリンガル教育について調べた内容を公開しています。
日本の英語力、お金をかけても向上しない
日本人の英語レベル、10年連続で下落
2020年のEF英語能力指数によると日本の世界での英語ランキングは10年連続下降を続けています。
2020年のランキングは、100カ国および地域中55位。アジアでは24カ国中9位です。一方で世界全体の英語力は向上傾向にあります。
日本の英語レベルについては、過去にEF Japanより「莫大な個人投資に反して向上していない」と名言されています。
英語教育にかけるお金
2020年に実施されたソニー生命の「子供の教育資金」に関する調査によると、70%の親が、英語教育にかけたいお金を「5,000円〜20,000円」と回答しました。
仮に月10,000円とすると年間12万円、幼少期から開始するとしたら、10年間で120万円の費用です。インターナショナルスクールの相場は東京で200〜250万円、海外留学となるとアメリカやイギリスは1ヶ月で100万円程かかります。
日本語は無料
一方で日本語は無料です。家族や友達と話すだけで、3年もすれば日常生活をスムーズに行えるだけの語学力が身に付きます。
バイリンガル教育に成功する国の特徴
一方で海外では、バイリンガル、またはマルチリンガルであることが当然の国もあります。バイリンガル教育に成功しているのです。何ヶ国語も話せることは、日本人からすると羨望の眼差しで見てしまいますが、彼らには当たり前のことなのです。
なぜフィリピン人は英語を話せるのか
私自身1ヶ月程フィリピンに滞在していたことがあるのですが、フィリピンの若い世代の人達の英語力はほぼネイティブ並みでした。フィリピンの小学校で日本文化を教えていましたが、全員英語力が優れていました。
もちろんタガログ語が母国語で、家庭の中では母国語を話します。家庭で英語を話さないのになぜ英語力が優れているのか。それは、フィリピンの教育にあります。歴史や国語の授業は基本的に英語で行われるのです。フィリピンの子供たちは、「英語でしか学べない」環境で鍛えられています。
一方で、Japan Timesのコラムニスト、エイミー・チャベス氏の見解によると、英語力の高さは学校教育が全ての要因ではなく、「学校以外の生活面での環境」が大きく影響しているようです。 フィリピンの街を見渡すと、看板や標識は英語ですし、テレビのニュースは英語で聞けます。このような日常での英語のインプットが多量であることも、要因と言えます。
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・英語での教育環境
・街の中の広告、標識、看板が英語で溢れている
・テレビのニュースが英語で流れる
シンガポールのバイリンガル教育
2020年のEF英語能力指数によるとシンガポールの世界での英語ランキングは100カ国中10位、アジアでは一位です。
シンガポールは、中華系、マレー系、インド系等で構成される多民族国家のため、母国語と英語の両方を話せることが当たり前の国です。母国語は、主に中国語、マレー語、タミル語です。
日本ではあくまでも日本語を理解してから、第二言語として外国語を学びますが、シンガポールでは、幼少期から当たり前のようにバイリンガル教育が行われます。フィリピンと同様、授業は「母語」の授業を除けばすべて英語で行われます。
また、シンガポールは多民族国家であるため、働くためには英語が必要である、といった動機付けも大きな要因です。多くの海外の企業が進出して栄えてきているため、「将来の就職のため」というモチベーションは大きいなものとなっています。
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・政府主導の二言語教育政策
・幼少時からのバイリンガル教育
・多民族国家のため共通語として英語が使われる
・就職のために英語が必要
4つの公用語が存在するスイス
スイスは国の方針で、4つの公用語のうち2つは習得するようになっています。4つの公用語は、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ロマンシュ語です。
バイリンガルサイエンス研究所によると、スイス人の3人に一人はバイリンガルです。スイスは国がマルチリンガル教育に精力的に取り組んでいるためです。
スイス連邦統計局の調査では、「教育や仕事の場で話す言語」に関して、「二言語以上を話す」と答えたスイス人は約4割もいたそうです。スイスは国の立地と歴史的な要因から、国も積極的にマルチリンガル教育を推進してきました。
国の政策の他に、家庭の中もユニークな環境になっています。スイスでは、例えば、父方の祖父母はフランス語を話す、母方の祖父後はイタリア語を話す、両親はドイツ語を話す、学校では英語を話す、と言ったように、身近な環境で人によって言語が異なることがよくあるようです。
Newsweekの記事によると、マルチリンガルの研究をしている教授が、子供は「この人と話す時はこの言語で話す」と認識するとの見解を示し、この習慣を徹底できれば、マルチリンガルになれるとのことです。
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・政府主導の多言語政策
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・親族が多言語を話すため、子供も話せるようになる
・大学や大学院の講義が英語で行われている
オランダの英語力は100カ国中1位
イギリス大学院時代のルームメイトがオランダ人で、オランダ人の集まりにも顔を出していましたが、オランダ人の英語力は群を抜いています。2020年のEF英語能力指数では、オランダは堂々の第一位。
実際、オランダでは、15歳以上の94%がバイリンガルで、77%が3ヵ国語を話し、37%が4ヵ国語以上を話せます (参考:欧州委員会のレポート)。
オランダは人口1700万人の小国のため、他国との関わりが不可欠です。将来の就職のためという英語を学ぶ動機が強くあります。英語教育は政府も力を入れており、オランダでは5歳の義務教育開始と同時に英語の学習が始まります。日本は文法から学びますが、オランダでは文法は中学校から学びます。
FRaUに掲載されていたオランダ在住ライターの方の記事によると、オランダの小学校7,000校のうち、2,100校で音楽で英語を学ぶメソッドを取り入れています。有名な歌手が歌う英語の楽曲をクラス全員で歌い、英語を覚えていく方法です。
またこの記事のライターの方がオランダ人に英語力の秘訣を尋ねると、「吹き替えでなく英語字幕で映画やテレビを見ているから」と応えたそうです。
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・小国のため英語が不可欠
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・5歳からの義務教育で英語を学ぶ
・文法は中学校から。使える英語を重点に置いている
バイリンガル育児に成功した外国の友人に聞いた話
映画を見てただけ!?
友人のエジプト人のモワカの英語はネイティブレベルです。エジプトの公用語はアラビア語で、家庭内ではアラビア語を話していました。
モアカは幼少期から多量の英語をインプットし、外国人の友人と英語でアウトプットしていたのです。
英語が上手でない母親が英語で話しかけていただけ!?
イギリス人のグレイグは奥さんが日本人です。お子さんは3歳で既にバイリンガルです。このケースは、よくあるケースです。グレイグが英語を話し、母親が日本語を話すパターンですね。ただこの後、グレイグが興味深いことを教えてくれました。
母親の日常生活での英語の語りかけと、英語の動画を見せることで、バイリンガルに育ったというエピソードです。
まとめ
各国のバイリンガル教育成功の要因について、共通点を挙げるとしたら、以下のポイントになります。
① 英語が不可欠な社会である
② 政府が積極的に英語教育に関与している
③ 幼少期から英語学習が行われている
④ 就職という英語習得の大きな動機がある
また、バイリンガル育児に成功した海外の友人へのインタビューでは、以下2点が要因としてあげられます。
① 小さい頃から動画を映画で見る
② 親が英語で語りかけをする
以上、次回は、日本で英語環境作りについて、調べて記事にしたいと思います。この記事が少しでもお役に立てたら嬉しいです。