『逃げる勇気――あなたが明日を生きるために』書評・紹介
本書の基本情報
- 書名:『逃げる勇気―あなたが明日を生きるために』
- 著者:和田秀樹(精神科医・心理学者)
- 発売日:2024年9月
- ページ数:256ページ
『逃げる勇気――あなたが明日を生きるために』
『逃げる勇気――あなたが明日を生きるために』は、精神科医であり、教育や心理学の分野で多くのベストセラーを生み出してきた和田秀樹氏による著書です。
本書では、「逃げる」という行為をネガティブに捉えるのではなく、自分を守るための大切な手段として肯定的に捉えることを提案しています。
しかし、日本を代表する文豪 夏目漱石でさえ、かつて「逃げる」ことで自分を守った過去があることが紹介されています。
私たちは、「逃げることは悪いこと」「困難から目をそらしてはいけない」といった価値観のもとで育ってきました。
しかし、現代社会では、多くの人が過剰なストレスやプレッシャーを抱え込み、心や体を壊してしまうケースも少なくありません。
本書は、そんな状況を変えるために「逃げることの大切さ」と「上手に逃げる方法」について詳しく解説しています。
「逃げる」ことは本当に悪いのか?
本書の冒頭では、私たちが「逃げる」ことに対して持っている偏見について考えさせられます。
学校教育や社会生活の中で、「努力し続けること」「最後までやり抜くこと」が美徳とされ、途中で投げ出すことは「根性がない」「負け犬」などと否定的に捉えられがちです。
しかし、和田氏はこうした考え方自体が、私たちを追い詰めてしまう原因になっていると指摘します。
特に、以下のような状況に当てはまる人にとって、「逃げる勇気」を持つことは重要です。
- 仕事や人間関係で限界を感じている人
- 周囲の期待に応えようとして疲れ果てている人
- 努力し続けても成果が出ず、自信を失っている人
- 精神的に追い詰められ、うつや不安を感じている人
こうした状況において、「逃げる」ことを否定してしまうと、どんどん苦しくなり、最終的には心や体を壊してしまう可能性があります。
だからこそ、「逃げる」ことを戦略的に選択し、自分の心を守ることが大切だと書かれています。
なぜ、人は「逃げられない」のか?
「逃げたい」と思っても、多くの人がそれを実行に移せません。
和田氏は、その理由として以下のような要因を挙げています。
1. 「逃げる=悪」という固定観念
社会的な価値観の中で「逃げることは恥ずかしい」と思い込んでしまっているため、逃げる選択をすること自体に罪悪感を抱いてしまいます。
2. 周囲の期待や評価を気にしてしまう
「親や先生に期待されている」
「同僚に迷惑をかけたくない」
「友人にどう思われるか心配」
など、他人の目を気にしすぎると、逃げたくても逃げられなくなります。
3. 逃げた後の不安が大きい
「仕事を辞めたら生活できなくなるのでは?」
「人間関係を断ったら孤独になるのでは?」
といった先の見えない不安が、逃げる決断を鈍らせます。
「逃げる技術」を身につけよう
本書では、「ただ逃げるのではなく、戦略的に逃げること」が大切だと説かれています。
単に現状から目を背けて逃げるのではなく、
「どこに逃げるのか」
「どうやって逃げるのか」を考えることが重要ということです。
1. 逃げるための準備をする
突然すべてを放り出して逃げるのではなく、少しずつ逃げ道を作っておくことが大切です。
たとえば、仕事を辞めるなら転職先を探しておく、人間関係を変えるなら新しいコミュニティを見つけておく、といった準備をすることで、不安を減らしながら逃げることができます。
2. 小さな「逃げる習慣」をつける
「休むこと」「頼ること」「弱音を吐くこと」も、逃げるための大切な要素です。
日頃から少しずつ「逃げる習慣」を身につけることで、大きな決断をするときのハードルを下げることができます。
3. 逃げた後のことを考える
「逃げる」と決めたら、その先にどんな選択肢があるのかを考えることが重要です。
たとえば、転職を考えているなら「どんな働き方が自分に合うのか」を考える、人間関係をリセットしたいなら「新しい人間関係をどう築くか」を考える、といった具合です。
夏目漱石も「逃げた」ことで道が開けた?
イギリス留学と漱石の精神崩壊
夏目漱石は、若き日にイギリスへ留学する機会を得ました。しかし、その留学生活は彼にとって地獄のようなものでした。
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当時の日本は「英語教育の第一人者になれ」という期待を漱石にかけていた。
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しかし、漱石自身は極度の対人不安を抱え、イギリスの孤独な生活の中で精神的に追い詰められていった。
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研究も思うように進まず、ひどい神経衰弱に陥る。
普通なら「せっかくの留学だから」と意地でも続けるかもしれませんが、漱石は逃げる決断をしました。わずか2年で日本に戻り、教師としての道を進むことにしたのです。
「逃げた」ことで生まれた傑作たち
この「逃げる決断」が後の彼の人生を大きく変えました。
日本に戻った漱石は、教師をしながら文学の道を進み、『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』といった名作を生み出しました。
もし彼が「逃げるのは恥だ」と無理をしてイギリスでの研究に固執していたら、おそらく日本文学史に残るような作家にはなっていなかったでしょう。
漱石のエピソードは、「逃げることが時には最善の選択肢である」ことを示しています。
さらに、漱石はこの経験をもとに 「無理をしすぎることの危険性」を作品の中でも描いています。
『こころ』や『草枕』では、人間の精神的な葛藤や生き方について深く掘り下げており、その背景には彼自身の「逃げることで救われた経験」があったのかもしれません。
「逃げる勇気」を持つことで得られるもの
本書を読むことで、逃げることに対する罪悪感が薄れ、「自分を大切にする選択肢」として前向きに考えられるようになります。
特に、以下のような効果が期待できるかなと思います。
- 心の負担が軽くなる
- 自分の人生を自分で選んでいるという実感が持てる
- 新しい環境に飛び込む勇気が持てる
- 「我慢しなくていい」と思えるようになる
実際に、読者からも「逃げることに対する考え方が180度変わった」「これまで無理していたことに気づいた」「もっと早く読めばよかった」といった感想が多く寄せられているようです。
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