- 子どもの幸福度と学力の関係とは?
- 幸福度と学力の関係とは?
- 地位財と非地位財
- 地位財と非地位財の関係性
- ウェルビーイングが高くなる学びとは?
- ウェルビーイングが低くなる学びとは?
- 収入が高ければ高いほど幸せになれる?
- まとめ:子どもの幸福度を高める学び方とは?
- 最後に
- 参考文献
子どもの幸福度と学力の関係とは?
学力と幸福度のバランスを考える
子どもの成長において、学力は大切な要素の一つです。
しかし、それ以上に大切なのは、子どもが幸せを感じながら健やかに育つことではないでしょうか。
『FQ Kids』2024年春号(VOL.18)の特集「幸福度(ウェルビーイング)と学力の関係」が、まさにこのテーマに迫っていて、面白かったのでまとめたいと思います。
幸福度と学力の関係とは?
慶應義塾大学 前野隆司教授の視点
本特集では、慶應義塾大学大学院教授であり、武蔵野大学ウェルビーイング学部長でもある前野隆司先生が監修を務めています。
前野先生は、幸福感を以下の2つに分類して解説しています。
地位財と非地位財
『FQ Kids』2024年春号(VOL.18)より
地位財(ちいざい)とは?
地位財とは、成績や学歴、収入、社会的地位など、他者と比較可能な要素を指します。
- 競争や比較に基づく幸福感
- 地位財は、「他の子よりも成績が良い」「名門校に入学した」など、他者との比較によって得られる満足感です。
- 一時的な幸福感
- この幸福感は一時的で、「次はもっと上を目指さなければならない」というプレッシャーを生み出しやすいのが特徴です。
- 承認欲求の追求
- 自己肯定感が他者の評価に依存してしまうことがあります。
非地位財(ひちいざい)とは?
非地位財とは、生きがいや人とのつながり、自己成長、愛情、健康、自由など、他者と比較できない要素を指します。
- 内面的な充実感に基づく幸福感
- 「自分自身が満足しているか」「自分らしく生きているか」に重きを置きます。
- 持続的な幸福感
- 人とのつながりや自己成長を通じて持続的な幸福感を感じることができます。
- 自己肯定感の向上
- 他人の評価に左右されず、自己肯定感が安定して高くなります。
地位財と非地位財の関係性
地位財によって得られる幸福感は一時的で長続きせず、
一方、非地位財から得られる幸福感は持続しやすい特徴があると論じられています。
非地位財を重視することで、長く続く幸福(ウェルビーイング)を実現することができます。
ウェルビーイングが高くなる学びとは?
① 得意な教科を伸ばす学び
- 自信を育て、モチベーションを高める
- 子どもが得意な教科に取り組むことで、成功体験を積み重ねることができ、自己肯定感が高まります。
- 内発的動機づけを促進
- 得意なことは自然な「もっと知りたい」「もっと挑戦したい」という意欲につながります。
- 個性を伸ばす学び
- 得意分野を深めることで、「自分らしさ」を見つけることができます。
② 興味があることを自分で調べる学び
- 自主性を育てる
- 「自分で調べてみよう」「もっと知りたい」という自主的な学びは、主体的に考える力を育てます。
- 探究心と創造力の向上
- 興味があることを追求することで、クリエイティブな思考が育まれます。
- 充実感のある学び
- 「知ることが楽しい」「学ぶことが面白い」と感じられるため、学習へのモチベーションが持続します。
③ 趣味やスポーツの期間で得る学び
- 心身のリフレッシュとバランス
- スポーツや趣味を通じてリフレッシュすることで、心の健康が保たれ、学習の効率も上がります。
- 仲間とのつながり
- 趣味やスポーツを通じて、他者との共感やコミュニケーションスキルを育むことができます。
- 自己成長の実感
- 挑戦し、成功や失敗を経験することで、自己成長を感じることができます。
ウェルビーイングが低くなる学びとは?
① 他の子どもと成績を比べる学び
- 競争によるストレスの増加
- 「あの子に負けたくない」「誰よりも上に立ちたい」という競争心が、ストレスや不安を増加させます。
- 自己肯定感の低下
- 他者との比較でしか自分の価値を感じられなくなるため、自己肯定感が低くなる可能性があります。
- 学びの喜びを見失う
- 競争が目的となり、学ぶことそのものの楽しさを見失うことにつながります。
② 目的を考えず、成績を上げることだけを目指す学び
- 外発的動機づけによる学び
- 「良い成績を取るためだけに勉強する」という外発的動機は、学ぶ意欲が一時的になりがちです。
- 意味を見出せない学び
- 「なぜ勉強するのか」がわからない状態は、学習意欲の低下を招きます。
- 成果主義のプレッシャー
- 「結果が全て」という考え方が、失敗を恐れ挑戦を避ける原因になります。
③ 苦手科目の克服に時間を割き、全科目を平均的にしようとする学び
- 自己否定感の増加
- 苦手科目に多くの時間を割くことで、「自分はできない」「自分はダメだ」という否定的な感情が強くなる可能性があります。
- 成功体験の不足
- 得意な科目での成功体験を積む機会が減り、「やればできる」という自信が育ちにくくなります。
- 学びの楽しさを見失う
- 苦手を克服することばかりに集中すると、学ぶこと自体が苦痛に感じられ、学習意欲が低下します。
収入が高ければ高いほど幸せになれる?
プリンストン大学 アンガス・ディートン教授の研究
「収入が高ければ高いほど幸福度は上がるのか?」
という問いに対し、プリンストン大学のアンガス・ディートン教授は、興味深い研究結果を発表しています。
- 一定以上の収入までは収入が増えるほど幸福度も高くなるとされている
- しかし、それ以上の収入を得ても、「日常的な幸福感」には大きな影響を与えないという結果が出ている
- 内面的な充実が鍵
- 最終的には、収入以上に、自己成長や人間関係の充実といった非地位財の要素が、幸福度を高める重要な要素であることが示唆されている
まとめ:子どもの幸福度を高める学び方とは?
- 地位財ではなく非地位財を重視する
- 学力や成績(地位財)にばかり目を向けるのではなく、「自分らしさ」や「人とのつながり」といった非地位財を重視した学びが、子どもの幸福度を高める鍵となります。
- 得意なことを伸ばし、興味を追求する学びを
- 子どもが「好き」「楽しい」と感じられる学びを提供することで、内発的な動機づけが高まり、持続的な幸福感が得られます。
- 他人と比べない
- 「他の子と比べてどうか」ではなく、「自分がどう感じているか」に目を向けることで、自己肯定感が安定し、学ぶことが楽しいと感じられます。
最後に
『FQ Kids』の特集を通じて見えてきたのは、学び方次第で幸福度は大きく変わるということです。
「何を学ぶか」よりも「どう学ぶか」が、子どもの幸福感を左右するということ。
成績や順位を追い求めるだけではなく、子どもの幸せを大切にする学び方を考える必要があると思いました!
参考文献
- FQ Kids 2024年春号(VOL.18)
- 慶應義塾大学 前野隆司教授の研究
- プリンストン大学 アンガス・ディートン教授の研究