なぜ働いていると本が読めなくなるのか—映画『パーフェクト・デイズ』を観て考えたこと
本を読む心の余裕がない
「働きながら本を読む余裕がない。」
そう感じたことがある人は多いのではないだろうか。
私自身、大学時代は夢中で本を読んでいた。
年間に何百冊と読み漁り、小説からビジネス書、英米文学まで、ジャンルを問わず本を手に取っていた。
しかし、社会人になってからはどうだろう。
読書の時間を確保するのが難しくなった。
仕事に追われ、帰宅後は疲れて本を開く気力もなく、スマホを眺めて1日が終わる。
そんな私が最近、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』という本を読んだ。
2024年の年間ベストセラー第1位(新書ノンフィクション部門)を獲得し、30万部を突破したヒット本だ。
そして同じタイミングで映画『パーフェクト・デイズ』を観た。
この二つの作品が重なり合い、働くことと読書の関係について考えさせられた。
『パーフェクト・デイズ』の主人公が持つ「余裕」
『パーフェクト・デイズ』の主人公・平山は、東京の公衆トイレの清掃員として働いている。
決して華やかでも、高収入でもない、社会的ステータスの低い仕事。
しかし、彼の生活はどこか満たされているように見える。
彼は毎朝決まった時間に起き、仕事に向かい、帰宅後は本を読む。
そして植物を育て、自然の中で穏やかな時を過ごす。
ここで私が注目したのは、彼が「働いているのに本を読めている」ということだ。
社会人の多くが「時間がない」「忙しい」と言い訳して読書を後回しにする中で、彼はしっかりと本を読む時間を持っている。
それどころか、彼の生活の中には余裕さえ感じられる。
働いているのに、読書をする余裕がある。
それは一体なぜなのか。
働いていると本が読めなくなる理由
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』という本では、働きながら読書をすることが難しい理由をいくつか挙げている。
その中でも、特に共感したのは以下の点だ。
「生産性」を求めすぎる社会の風潮
現代の社会では、仕事だけでなくプライベートでも「何か役に立つことをしなければ」と考えがちだ。
本を読むにしても、自己啓発本やビジネス書など、「役に立つ」ものばかりを選びがちになる。
しかし、読書は本来、もっと自由でいいはずだ。
小説を読んで物語に没入すること、ただ知識欲を満たすこと、それ自体が価値のある行為なのに。
疲れによる精神的な余裕の欠如
仕事で疲れてしまうと、どうしても手軽な娯楽に流れてしまう。
スマホで動画を見る、SNSをスクロールする。
そうしているうちに、気がつけば読書をする時間も気力もなくなっている。
スキマ時間の使い方の違い
仕事が忙しくなると、スキマ時間さえも「効率的に使おう」としてしまう。
例えば、通勤時間にニュースをチェックしたり、仕事のことを考えたりする。
でも、平山は違った。
彼は本を読み、音楽を聴き、ただ自然を眺める時間を持っていた。
「完璧な生活」とは何か
『パーフェクト・デイズ』のタイトルには、「完璧な日々」という意味がある。
では、主人公・平山の生活は本当に完璧なのだろうか。
収入も低く、社会的に成功しているわけでもない。
だが、彼は本を読み、音楽を聴き、植物を育てる。
それは、彼が「自分にとって大切なもの」を知っているからではないか。
お金や地位、効率を最優先するのではなく、「自分が心から楽しめるもの」を生活の中に組み込む。
それこそが、本当の意味での「余裕」であり、「豊かさ」なのではないか。
私たちも「余裕」を持てるのか
社会人になり、読書ができなくなったと嘆く私たち。
しかし、映画を観て気づいた。
時間がないのではなく、「時間の使い方」が問題なのだ。
平山のように、仕事の後に静かに本を読む時間を持つ。
スキマ時間にスマホではなく、文庫本を開く。
そうするだけで、私たちの生活も少しずつ「パーフェクト」に近づいていくのかもしれない。
忙しさに流されず、自分にとって大切な時間を守ること。
それこそが、働きながらも本を読むための「余裕」を生む鍵なのだろう。
※映画『パーフェクト・デイズ』は、【Amazon Prime Video】 で視聴可能です。