- 企業の総合職で働くワーママ
- 日・英・中のマルチリンガル
- 海外渡航歴20カ国以上
- 海外大学院 修士号
- はじめに:なぜ今、「早期教育の弊害」を考えるのか?
- 早期教育とは?メリットと人気の背景
- 【弊害1】早期教育で「自己肯定感」が育ちにくくなる
- 【弊害2】早期教育がもたらす「親子関係の歪み」
- 【弊害3】「学ぶこと=義務」になってしまう
- 【弊害4】早期教育によって「幼少期の遊びの時間」が奪われる
- 【体験談】4歳から塾通い「宿題があるから帰るね」と言われた日のモヤモヤ
- 子どもらしい時間は、一度しか戻ってこない
- 【弊害5】早期教育による「将来の“燃え尽き”」リスク
- 早期教育を活かすための“ちょうどいい距離感”とは
- 海外の早期教育観と日本の違い
- 動機づけ・やる気と学びの関係を扱う本
- 🌍 英語だけは“早ければ早いほど良い”と考える理由
- まとめ:子どもの未来を見据えた関わりを
はじめに:なぜ今、「早期教育の弊害」を考えるのか?
「学習は早ければ早いほど良いの?
「知育は早ければ早いほど良いの?」と、焦りを感じたことはありませんか?
近年、「○歳から始める〇〇教育」といった早期教育の情報があふれています。
しかし、その裏側で、無理な詰め込みや過度な期待が子どもに与える影響も少なくありません。
この記事では、早期教育に潜む“隠れた弊害”について、実際の体験も交えながらまとめます。
早期教育とは?メリットと人気の背景
早期教育とは、乳幼児期から学習的な刺激を与える教育のこと。
幼児塾、オンライン塾、通信教材など、選択肢は年々増加しています。
主なメリット
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脳が柔軟な時期に吸収力が高い
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小学校以降の学習がスムーズになる
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親の関与が多いため愛着形成にもつながる(こともある)
ただし、「早く始めなければ手遅れになる」という不安が、親の過干渉を招いてしまうケースも。
【弊害1】早期教育で「自己肯定感」が育ちにくくなる
早期教育では、成果を目に見える形で求めがちです。
- 「アルファベットを全部読めた!」
- 「計算ができるようになった!」
という達成感が、親の承認にすり替わってしまうと、子どもはこう思うようになります。
「できたから褒められる。できなかったらダメなんだ」
この状態が続くと、「自分は“ありのまま”では価値がない」と感じ、自己肯定感の土台が育ちません。
【体験談】「すごくなくていいんだよ・・」
日々の“成果報告”に感じる違和感
私の周りにも、4歳から毎日公文に通っていて勉強を頑張っているお友達がいます。
とても頑張り屋さんで、会うたびに「これができるようになったよ!」「ここまで進んだよ!」と報告してくれます。
自分の“できた”を伝えてくれるその姿は、けなげで微笑ましい。
でも時々、こう思ってしまうのです。
「“すごく”なくていいんだよ」
「あなたは、できてもできなくても素敵だよ」
その子自身が“できること”を喜んでいるならそれでいい。
けれど、「褒められるために頑張ってる」「できない自分ではダメだと思っている」ような様子が垣間見えると、少し心がざわついてしまうのです。
これは、その子が悪いのではなく、「評価されることで自分の価値を感じる」構造が、すでに小さな子どもの中に根づいてしまっている証なのかもしれません。
こんなこともありました。
別の日、その子がこうつぶやいたのです。
「あの子はこんなことができるんだ……。
わたし、だめだ……」
それは、ただの落ち込みというよりも、“自分の存在価値”まで否定してしまうような、深い沈み方に見えました。
「頑張っている自分」は誇れるけれど、
「誰かの方ができる」と気づいた瞬間、「自分はダメ」と感じてしまう。
その極端な自己評価は、小さな子どもにとってあまりに重すぎるのではないかと、見ていて胸が苦しくなりました。
【弊害2】早期教育がもたらす「親子関係の歪み」
「なんでできないの?」
「なんでできないの?」
「前はできたのに、なんで今日はやらないの?」
教育熱心な親ほど、無意識のうちに“成果”に目がいきがちです。
でも、子どもは親の期待に応えようとするあまり、本音を押し殺してしまうことも。
その結果、甘えや安心感を感じにくい“ビジネスライクな親子関係”になってしまう危険があります。
関連して、以前「高学歴という病」という本を読みましたが、共感を覚えました。
【弊害3】「学ぶこと=義務」になってしまう
本来、学びは「楽しい!」という好奇心から始まるものです。
ところが、毎日のワークやお稽古で「やらなきゃ」「怒られるから」と感じるようになると、“内発的な動機”が育ちにくくなります。
こうした子どもは、自由時間になっても「やらされること」以外に何をしたらいいかわからなくなることもあります。
【体験談】毎日のZ会に押しつぶされそうな親子を見て思ったこと
もう一人のお友達は、毎日Z会の教材に取り組んでいます。
でも、その様子は少し心配になるものでした。
- 「やりたくない!」
- 「毎日やるって約束したでしょ!」
という押し問答が、日常になってしまっていると、お母さんが言っていました。
お母さんは怒りながら、子どもは泣きそうになりながら、教材に向かっている。
そんな姿を想像しました。
きっと、どちらも頑張っている。
お母さんも、子どもの将来を思ってのこと。
でも、見ていると、「勉強」が家族全体のストレスになってしまっているように感じてなりません。
「やらなきゃ」に変わった瞬間、学びは苦しみに変わる
Z会の教材はとても質が高く、よく練られた良い教材です。
我が家も資料請求をしたことがあり、豊富な内容だと思いました。
ただあくまでも「子ども自身がやりたい」と思ってこそ、意味があると思います。
どんなに良い教材でも、
「やりなさい!」と怒られながらやる日々が続けば、
「学ぶこと=苦しいこと」になってしまいます。
さらに、親にとっても「また今日もできなかった」「また怒ってしまった」という自己嫌悪が積み重なっていきます。
教育は“愛情”か、“圧力”か
この体験から強く感じたのは、
早期教育が「愛情表現」ではなく、「圧力」になってしまう危険です。
教育熱心な親ほど、「将来のために」と願いながら、
いつの間にか“今の子どもの気持ち”を置き去りにしてしまうことがあります。
でも、“今の気持ち”を無視して始まった学びは、長続きしません。
それどころか、子どもの自己肯定感を削り、親子関係にもひずみを生むことさえあるのではないでしょうか。
【弊害4】早期教育によって「幼少期の遊びの時間」が奪われる
遊びは最も重要な「学び」の時間
子どもにとって、遊びは最も重要な「学び」の時間です。
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ルールを覚える
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人との関わりを学ぶ
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自分の感情をコントロールする練習
これらは、ドリルやプリントでは代替できません。
過度な早期教育で「おもちゃの時間」や「ごっこ遊び」が削られていくと、社会性や創造力の育成に支障が出る可能性があります。
【体験談】4歳から塾通い「宿題があるから帰るね」と言われた日のモヤモヤ
ある日、保育園の帰りに子どもたち数人で公園に集まった時のことです。
みんなが「一緒に遊ぼう!」と盛り上がる中、お友達の一人がこう言われていました。
「あなたは宿題があるから帰るわよ」
その子は4歳。
まだ年中さんです。
毎日塾に通い、帰宅後も宿題に取り組む生活。
そして、保育園の仲間と遊ぶ時間を削ってまで、今日も学習のスケジュールを優先しなければならないのです。
その子は泣きそうな顔で、何も言わずにお母さんと帰っていきました。
その子の姿を見て、切ない気持ちになったのを覚えています。
「遊び」の中に人生に必要な学びが詰まっている
もちろん、勉強も大事。塾も悪いわけではありません。
でも、子ども同士で自由に関わり合う「遊び」の中にこそ、人生に必要な学びがぎゅっと詰まっていると思うのです。
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相手の気持ちを読み取る力
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ルールを一緒に作る経験
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想像力や自己表現の練習
これらは、ワークやプリントでは決して身につかないこと。
「この子は、今、本当は何を必要としているのかな?」
「“遊びたい”という気持ちを、ずっと我慢していないかな?」
そんな問いが、頭の中をよぎりました。
子どもらしい時間は、一度しか戻ってこない
4歳、5歳は、ただただ遊びに夢中になれる、かけがえのない時期。
この時期を「先取り学習」で埋め尽くしてしまったら、
“子どもらしい子ども時代”を失ってしまうかもしれない。
そんな不安も、正直あります。
宿題を頑張る子が悪いわけではないし、親の気持ちもわかります。
でも私は、子どもたちの「今しかない時間」が、学習よりももっと大切なもので埋まっていてほしいと願っています。
【弊害5】早期教育による「将来の“燃え尽き”」リスク
幼少期に頑張りすぎたケース
実は、中高生・大学生になってから「もう頑張れない…」と燃え尽きてしまう子の中には、幼少期に頑張りすぎたケースもあります。
常に「もっとできる子」として扱われてきた結果、
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自分の限界を知らない
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休むことに罪悪感を持つ
-
他者との比較から抜け出せない
といった心理的負担を抱え、心身ともに疲弊してしまうことも。
教育評論家・尾木直樹(尾木ママ)も以下のコメントをしていました。
「小学校低学年のうちから“お勉強漬け”にされてきた子どもが、思春期以降に“もう頑張れない”と脱力するケースは、実際に増えている」
早期教育を活かすための“ちょうどいい距離感”とは
大切なのは、「親の期待」ではなく「子どものペース」に寄り添うこと。
たとえば:
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興味を示したタイミングで一緒に学ぶ
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結果よりも「楽しんでいるかどうか」を大切にする
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遊びや自由な時間をたっぷりと確保する
“教育”ではなく、“好奇心を支える環境づくり”が早期教育の本質だと考えています。
“がんばらせる”ではなく“好奇心を育てる”
「早期教育=ドリルやお勉強」と思われがちですが、
わが家では、“好奇心が自然と育つ環境を用意すること”こそが、本質的な早期教育だと考えています。
子どもが「これ、やってみたい!」「もっと知りたい!」と思ったときに、
その芽をつぶさず、そっと応援する。
そんな子育てを目指してきました。
これまでにブログでご紹介してきた、わが家の実践例をいくつかご紹介します。
海外の早期教育観と日本の違い
日本では、
「小学校入学前にいかに先取りするか」
「読み書き計算を早く身につけるか」が重視されがちですが、海外では少し異なるアプローチが取られています。
「海外」と一括りにしても、様々な国がありますし、その国の中でも、多様な教育がありますが、ここではあくまでも一般的な考え方をまとめます。
アメリカ・カナダ | 早期教育に対する見解の違い
非認知能力が最優先
幼児期に重視されるのは、「社会性」「自制心」「感情のコントロール」といった「非認知能力(non-cognitive skills)」です。
そのため、プレイベース(遊び中心)のカリキュラムが一般的で、以下のような考え方が根づいています。
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小学校入学前は“学ぶ準備をする”時期
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数字や文字よりも「遊びを通じて学ぶ」ことが最も大切
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「一人ひとり違って当たり前」という個性重視の教育姿勢
フィンランド | 早期教育に対する見解の違い
7歳までは“自由に遊ぶ”
教育先進国フィンランドでは、義務教育の開始が7歳から。
それまでの間は、自然の中で思いきり遊ぶ時間を重視しています。
「早く始めれば賢くなる」とは考えず、
「子ども時代は、子どもらしく生きる時間」
という価値観が当たり前。これは学力調査で常に上位を誇る同国ならではの教育哲学です。
イギリス・フランス| 早期教育に対する見解の違い
詰め込みより“余白”を大切に
国によって違いはありますが、ヨーロッパ全体としても「小さいうちは遊び・対話・生活習慣の安定」を重視し、「詰め込み型の知識教育」は極力避ける傾向にあります。
なぜ日本では“先取り教育”が主流なのか?
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受験競争や“出遅れ不安”が根強く、親の焦りを生みやすい
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「ちゃんとできる=良い子」という価値観が未だに強い
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教育産業が“早く始めないと遅れる”という言葉で不安を煽りやすい
こうした要因が、早期教育を“親の自己実現”や“子どもの競争力確保”の手段にしてしまうリスクにつながっています。
海外の考え方から学べること
私たちが見直すべきは、“早くできること”よりも、“じっくり育つこと”の価値かもしれません。
海外の教育観に学ぶなら:
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「遊びこそ最高の学び」という視点を持つ
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一斉教育ではなく、“その子らしさ”を尊重する
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教育を“先取り”ではなく“共育(ともに育つ)”と捉える
そして何より、「○歳までにこれができる」がゴールではなく、「どんな人になっていくか」のプロセスを大切にする視点が重要です。
動機づけ・やる気と学びの関係を扱う本
親子の心の関係にフォーカスした本を中心にご紹介します。
『やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ』
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著者:大平信孝(メンタルトレーナー)
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出版社:かんき出版
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内容:
子どものやる気は、外発的動機(怒られる・褒められる)に頼りすぎると長続きしないこと、逆に内発的な興味を大切にすれば自律的な学びになることを、親の立場からも読み解ける本。リンク
『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』
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著者:柴田愛子(りんごの木子どもクラブ代表)
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出版社:ポプラ社
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内容:
幼少期からの「できた・できない」で評価する接し方が、自信を失わせ、過剰な競争意識や落ち込みやすさにつながると指摘。長期的な視野での子育てが必要と説いています。リンク
『自分から学べる子になる 戦略的“ほったらかし”教育』
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著者:麻生夕貴(元塾講師・教育ライター)
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出版社:草思社
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🔍 「教えすぎない」「先回りしない」「管理しない」ことで、子どもが自分のペースで興味を深め、“学ぶ力”を内側から育てる方法を紹介。
いわゆる“放任”ではなく、親が一歩引いた“戦略的サポート”によって、親子関係のストレスも減らしながら、学びが育つことを実践的に提案しています。✔「ほったらかし」とは、“任せる信頼”のかたち。
🌍 英語だけは“早ければ早いほど良い”と考える理由
早期教育の弊害を書く一方で、「英語の早期教育」に関しては、例外的に重要だと考えています。
英語教育において「早い方がいい」と言われる理由には、脳科学的・言語習得理論に基づく根拠があります。
以下に、代表的なメリットを5つご紹介します。
①【脳の臨界期】英語の音を聞き取れる“耳”は幼児期に決まる
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脳には言語音を聞き分ける臨界期があり、特に0〜6歳ごろは、英語特有の「L」と「R」などの音を自然に聞き分けられる時期。
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この時期を過ぎると、母語(日本語)の音に最適化され、英語の微妙な発音が聞き取りにくくなる。
②【発音力の土台】きれいな発音・イントネーションが自然に身につく
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幼児期は口の筋肉や耳が柔軟で、英語の発音やリズムを“まねる力”が非常に高い。
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意識せずネイティブに近い発音が定着するのは、この時期の大きな特権。
③【言語への抵抗感が少ない】「英語=苦手」が生まれにくい
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幼児は言語を“学習”ではなく“遊び”として吸収するため、英語を“勉強”と捉えず、抵抗感なく楽しめる。
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小学生以降の「英語アレルギー」の多くは、遅れて始めた場合に見られる傾向。
④【多言語に対する脳の柔軟性が育つ】将来の学びにも影響
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複数言語に触れることで、メタ認知力(ことばをことばとして意識する力)が育つ。
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言語の違いや表現の幅を早くから体感することで、国語力・論理力の伸びにもつながるという研究も。
⑤【“正解がない力”を育てる】英語は探求型・表現型の学びに近い
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幼児英語は、「発表」「感情表現」「問いかけ」にも重点が置かれるため、自分の言葉で考える力・伝える力が自然と育つ。
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正解が一つではない世界を幼少期に体験することが、創造性やコミュニケーション力の土台になる。
英語は「早期が有利」
特に耳(音声知覚)や発音の習得においては、幼少期の方が圧倒的に吸収力が高く、
中学生以降に始めた場合と比べて、大きな差がつくとされています。
こどもの英語学習について、記事を書いていますので、是非ご覧ください。
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まとめ:子どもの未来を見据えた関わりを
早期教育にはメリットもたくさんあります。
でも、その前に
「何のためにやるのか?」
「子どもにとって今、必要なのか?」
を見極めることが何より大切だと思います。
親子ともに「やってよかった」と思える学びを育むために、私自身、焦らず、比べず、子ども一人ひとりの“今”に寄り添う姿勢を忘れないようにしたいです。
最後までご覧いただきありがとうございました。